なんでカラダづくりが大事なの?

カラダづくりをしても運動ができるようになるだけ?と思われる方もいるかと思います。しかしそれだけではありません。実はカラダづくりをすると生きていく上で役立つたくさんの恩恵を得ることができます。このページでは、私たちがこだわるカラダづくりについて解説します。


厚労省の調査によると障害児通所支援事業所における保護者の利用ニーズは『感性と表現力の向上』が最も多く、『社会性やコミュニケーションスキルの獲得』が2番目に多いそうです。そういった『社会性や表現力』。実はカラダが土台となって育まれることが現代の科学で明らかになってきています。


私たちが何か行動をしようとするとき、目や耳だけでなく、皮膚や筋肉などを含めたたくさんの感覚器官から情報を受け取って、環境と自分のカラダの状態を把握しています。その情報が脳に送られることで行動の計画が立てられ、実際の行動としてカラダを通して実行されます。そうした流れがグルグルと繰り返されることによって、行動が成熟したり新しい行動が生み出されたりします。


「ああしてみようこうしてみよう」「どうやったらできるかな?」「こうしたらこうなるかも」。やってみて、経験してみて、またやってみる。ときには違うやり方も。それはまさに、カラダを通した世界との対話。


カラダを通して得られた経験は豊かな行動力や想像力を育みます。読んだり書いたりだけでなく、料理をしたり、絵を描いたり、何かを生み出したり。


そして、上手な人間関係を築いていくために必要な社会性。それは経験だけではなく、実はカラダからのさまざまな影響を受けて育まれていくことがわかってきています。


ハアハア、ドキドキ、ゾクゾク。これらは心の動きを表すときに使う言葉ですよね。これらの言葉、よく考えてみると、カラダの中にある臓器によって生み出されている感覚であることがわかります。つまり、心の動きは臓器によって生み出されているということ。その臓器の働きは、自律神経によって働きを活発にしたり、働きを抑えたりとコントロールされています。


自律神経はこれまで交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)の2種類に分けられていました。

しかし、近年では副交感神経をさらに2種類に分けて考えるようになりました。新しい方の副交感神経(腹側迷走神経)は、進化の中で哺乳類以降に飛躍的に発達した神経であり、動物を社会的行動に駆り立てる神経であると考えられています。


新しい副交感神経(腹側迷走神経)は、首から上の器官に枝を伸ばす神経です。表情を動かす神経、発声の調節をする神経、音の聴こえを調節する神経などが含まれています。そのため、大きく口を開けて声を出したり、ニコニコ笑顔を作ってみたり、変顔をしてみたりすることによって、それらの神経が活性化し社会的行動が増加すると言われています。表情豊かな人のほうが、社交的であったり話しかけやすい雰囲気を出していたりしますよね。


対人関係において波長が合う合わないという言葉で表現されることもありますね。実はこの波長が合う合わないもカラダの影響を受けています。まばらな拍手のタイミングが自然にそろったり、歩いている人の歩調が自然にそろったりすることがあります。こうしたリズムがそろうことは、人と人の心をつなぎ、協力関係を築いたり、思いやりの行動を促進したりする働きがあることがわかってきています。この働きのことを「対人同期現象」という現象として説明されています。


対人同期現象は、リズム情報が同期することによって起こります。目や耳で捉えたリズム情報をカラダで作り出すリズムに変換して実行することによってそれが成立するといわれています。リズム生成には協調運動と深く関係する小脳が関与しています。また、呼吸や心拍のリズムなども関係していると思われます。早口でせっかちでマイペースな人などはゆっくりのリズムに合わせていくことが難しいのかもしれません。


最後に、相手の立場に立って推測するために必要な心の理論というものもあります。この心の理論が成立するためには、3つの段階があります。1段階目は、自分の心とカラダの状態がわかること。2段階目は、その自分の状態と相手の状態を重ねてわかること。これには、ミラーニューロンと呼ばれるものまね細胞が関係していると言われています。3段階目は、自分とは違う他者の意図がわかること。ここは難しいので省略しますが、視覚情報と重力情報の脳内での処理が関係しています。


社会性につながるカラダづくりには具体的にはどんなことをしたらいいの?と思われるでしょう。実は結構簡単な運動である程度それを育むことができます。それは、背骨をいろいろな方向に動かす運動をすることです。ネコとウシのポーズで背骨を前後に動かしたり、金魚運動で左右に動かしたり、寝返りでねじる方向に動かしたり。背骨を動かしていくことで、自律神経のバランスが取れたり、リズムよくカラダを動かしたりすることにつながっていきます。


また、皮膚を通したやりとりも大事です。触れ合うことを通して、絆ホルモンとも呼ばれるオキシトシンというホルモンが分泌されやすくなり、人への愛着が育まれます。また、自律神経や皮膚、筋肉、内臓などの状態が良くなることで、自分のカラダのイメージや心の状態が整っていきます。


障害があってもなくても私らしく生きる。趣味に没頭したり、誰かのために働いたり、家族仲良く過ごしたり。その人にとって意味と価値がある作業はさまざまだと思います。「カラダづくり」はそうした作業が将来より良く、そして長く健康に実現するための手段の一つ。そして、このページに書いたことは子どもだけでなく大人も同じです。ぜひ一緒に取り組んでいきましょう!